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友情のハイタッチで再生を!済州一周サイクリング
風と友情の済州一周サイクリングの10年 (1)
2011.11.06 (日) 玄善允 editor@jejujapan.com

 

   
▲ 撮影 : 裵智媛

僕たち仲間は10歳を直前にした10年ほど前から毎年1回、合計10回にわたって、大阪から愛車を飛行機で携行して、済州一周サイクリングを続けてきた。

そもそもは、大学で知り合って以降30年余りの交友を続けてきた在日二世三人組の酒に酔っぱらったあげくの与太話が発端だった。僕らも中年の盛りを過ぎ、そろそろ人生の終点を視野に入れて生き直さねば、そしてその契機をサイクリング旅行にと。しかも、三人のうちの二人が済州島出身の両親を持つという因縁で、是非とも自転車で済州「征服!」をということに話はとんとん拍子にまとまった。中年三人組の冒険だから用心のためにと、サポート役を頼んでおいた済州在住の従兄は空港で僕らを迎えるなり、「歳も歳だし、このひどい風の中でサイクリングなど到底無理だから、適当に遊んで無事に帰れ」とのお達し。なるほど、街路樹は風で大きく揺れている。それでも僕らは折角の冒険の機会を逸するわけにはいかないと強情を張り、市街地は避けて、安全で快適な地域だけのサイクリングということで妥協が成立した。

こうして従兄の車で自転車と体を運んでもらい、済州市の西、涯月面の海岸道路入口を始発点として西回りとなった。そこから遮帰島を眼前にする高山里を経て大静邑までは海岸の絶好のサイクリング道。豊かで変化にとんだ海景色が西日を受けて次々とその様子を変える。しかも適度なアップダウンが続く海岸道路を、強い風を背に快適に飛ばした。それに初日の張り切りもある。予想以上に走行距離が伸びたせいで調子に乗った僕たちは、もうサポートなど不要と見栄を切り、従兄には西帰浦で待ってもらうことにした。

ところが大静邑の途中からは追い風から向かい風になり、その強烈な風を全身で受けることになった。しかも山房山あたりから西帰浦までは海岸沿いの道路はなく、変化のない大きな自動車道路が連綿と続く。それも長い登り斜面となると、当初の張り切りのしっぺ返しで、風と疲労と上り坂のトリプルパンチ。ペダルが恐ろしく重くなり、夕暮れも迫ってきたから帰路を急ぐ車の警笛とスピードに脅かされて冷や汗まで。中文の観光団地の手前の長い登り坂の途中で、遅れていたO君がついには自転車を降り、引きずり出した。「もうあかん」と顔面蒼白で意気消沈の声。後で聞いてみると前日に発熱し、出発も危ぶまれたのに、旧友同士の固い約束で期待に胸を膨らませていたから無理を承知で旅立ったとのこと。仕方なく、最寄りのガソリンスタンドで従兄に電話して迎えにきてもらうという情けないことになった。翌日は西帰浦から成山浦を経由して済州に向かった。前日の風と坂との格闘ですっかり膝にガタがきているし、風に冷たい雨交じりで気持ちが萎える。しかし、負けてなどおれない。なにしろ前日に負けたのだから今日こそは!ところが、砂が竜巻のように踊り、耳にはゴーゴーという風の音しか聞こえない。遥か遠方で幻想的な美しさで聳え立つ日出峰が「おいで、早くおいで」と呼びかけてくれているのだと無理にでも自分に言い聞かせ、時速5キロにもならないよろよろの走行で、なんとか成山日出峰までたどり着いた。

頑張ったご褒美と、昼食にはアワビの粥とサザエ、そして軽くビールまで。そして再出発。ところが、お腹が膨れると体に力が入らないし、風の勢いはさらに増している。海岸道路を越えるほどに波しぶきが襲い掛かってくる。従兄がそんな僕らの様子を見るに見かねて「ドクターストップ」をかけた。それをこれ幸いと、予定を変更することにした。ただし、断念するわけではない。山間でアップダウンが少なく、風の負担も少なそうな道を従兄に選んでもらい、そこまで車で送ってもらった。山間の急な下りの道を発進した。ところが、下りがいつまでも続くわけがない。途中からはのっぺりとした大平原を見晴らす道なので傾斜などなさそうなのに、ペダルが恐ろしく重くなる。しかも右の広大な牧場側から突風が襲ってきて、ハンドルの維持もままならない。右からの強風に対抗して、右前方に進路を向けてなんとかまともに走れるほど。速度は歩いているのと変わらない。城邑の民俗村が見えたころにはすっかり日が暮れていた。民俗村の食堂で、チジミを肴に粟のマッコリを飲むと、全身に酔いが行きわたる。動くのはもちろん、口を開くのも億劫なほど。あとは車で西帰浦の宿へ急いだ。車中の僕らは殆ど居眠り状態だった。三日目は初日の出発点(涯月面)から城山方面に、激しい追い風の助けを借りて飛ぶように走る。初日にギブアップしたO君の敗北を挽回するような軽快な走りぶりに、後から懸命に追う羽目になった僕ら二人は、顔を見合わせてにんまり。2日目のギブアップ地点までたどり着いて、思わず三人でハイタッチ。車で後を追ってきた従兄も、僕らの子供じみた喜び方を見て、大声で笑いだした。最終日には初日のギブアップ地点(中文)から西帰浦まで、好天気に恵まれて漢拏山を左に仰ぎながら軽快に走った。全走行距離220キロ。一周に相当する距離であり、完走だと互いに労い合った。しかし、内心、それは嘘だ、と後ろめたさが拭えない。そこで「再度、但し、今度は風が少ない季節を選んでリベンジを」などと再挑戦を固く約束しあった。友情で本当に風に打ち勝てるのはさて、いつになることやら? 

 

玄善允 

 1950年、済州島出身の在日朝鮮人を両親として大阪に生まれ、大阪大学及び大阪市立大学大学院にて仏語・仏文学を学び、日本の京阪神の諸大学にて仏語仏文学を講じる。フランス文学以外の著書・論文としては、在日論として『「在日」の言葉』その他があり、済州関連では「龍王宮再考―聖性を欠いた場における祈りと孤立した共同性」その他がある。済州大学校耽羅文化研究所特別研究員、大阪経済法科大学アジア研究所客員教授。

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登録番号 : Jeju Da 01093   登録時間 : 2008年 11月20日   発行人 : 宋姃姬
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