Update 2012.12.12 水 18:33
トップページ お気に入り
全記事一覧
首页 > 新聞 > 環境 > オルム
オルムの上で聞く 済州の物語
2011.10.12 (水) 尹龍澤(ユン・ヨンテク) jejudesk@jejujapan.com
   
▲ タラビオルム 写真提供 : 済州特別自治道

寄生火山として広く知られている「オルム」は済州の代表的な景観の一つである。オルム王国とも呼ばれる済州島には、その名に恥じず368のオルムがある。済州人はオルムの下で生まれ、オルムに上り下りしながら暮らし、オルムの上に埋められる、という人生のサイクルを送ってきた。オルムは牛馬を育てる牧草、草家の材料である茅、大きな行事を執り行う際に使用する薪を提供してくれるところであった。大部分の中山間のオルムは村の共同牧場、村の共同墓地の役割をはたし、済州人がいつの日にか戻っていかねばならない故郷でもあった。

しかしながら、近代化の風が吹いて、オルムはもはや済州人の生の場所ではなくなった。耕運機とトラクターを利用して農作業を行い、洋風の家とアパートが立ち並び、石油とガスを燃料として使用するようになって、オルムは経済的価値を失い、使い道のない土地に転落してしまった。村の共同牧場など必要がなくなってしまった。さらには、葬儀の形態も土葬から火葬へと次第に変わり、オルムは墓地としての機能も失いつつある。オルムは島外の富裕な人々の投機対象になり、ゴルフ場やリゾート団地のための場所になってしまった。

とはいえ、最近になって、オルムの価値に改めて照明が当てられ始めた。生存のための壮絶な暮らしを強いられていた時代には、オルムが審美的対象になどなるはずもなかった。しかし、経済的な上昇の恩恵に与った現代人は、オルムの美しさを鑑賞する余裕を備えるようになった。周囲からその優雅な曲線と野生の花々の美に見惚れ、そこに上って周辺の景観を見渡すために、オルムを訪れる観光客が増えている。さらには、文化体験、生態体験、歴史体験などが観光の主要なコンテンツとして脚光を浴び、済州のオルムは新たな価値を創出している。

オルムの草地は酸素を吐き出し二酸化炭素を吸収して大気の浄化機能をはたし、済州人に濾過された水を供給してくれる清浄地下水の源泉でもある。そして、保全が行き届いたオルムは多様な動植物の棲息地になる。オルムの上に生い茂る野生の草、四季折々、色とりどりに咲き誇る野生の花々、オルムの湿地帯に棲息する珍しく貴重な動植物など、その価値は推し量ることができないほど大きなものである。済州のオルムは、生態系の生命種の多様性のためにも、なんとしても保護すべきものである。オルムは済州の歴史の現場であり、韓民族の歴史の現場である。大陸と海洋をつなぐ位置にある我が国は、数多くの外敵の侵入を受け、そのための防御施設として、済州には城が3か所、鎮が9か所、烽燧が25か所、煙臺が38か所設置された。済州道内にある25か所のうちの24か所の烽燧は、展望がよい海岸地帯のオルムの頂上に位置している。そして、そうした展望のよいオルムは、日本の植民地末期には、日本軍の駐屯地、訓練基地、格納庫、高射砲陣地として使用されもした。

 
   

 

アブオルム  写真提供 : 済州特別自治道

 

オルムは済州の歴史の最大の悲劇である4・3事件の主要な背景である。済州4・3事件はオルムで烽火が上がるのを合図に始まり、蜂起した武装隊が駐屯・訓練する根拠地にもなり、住民の避難所にもなり、討伐隊が掃討化作戦を始めると、虐殺現場にもなった。このように済州のオルムは済州道と中央政府、そして我が国を取り巻く強国間の国際関係を理解するのに恰好の歴史的文化遺産である。

多様な形態のオルムは済州島の数多くの説話と伝説と密接につながっている。済州人ならだれでも一度は聞いたことがある「ソルムンデハルマン」の説話がその代表例である。済州人はオルムの周辺で村を形成したので、どの村もオルムを背景にした村創りの由来を持っている。そればかりか、オルムは昔から巫俗信仰の聖地として済州人の心中深くに確固とした位置を占めてきた。したがってオルムに関する文化資料を発掘して、文化体験の場とするのに恰好の場所である。

日々の食事にも事欠いた時代にはオルムを美の対象として眺めることなどできはしなかったが、時間と経済的余裕が生まれ、生活の質を追求するようになって、オルムは済州人ばかりか観光客にも審美的対象として浮かび上がっている。距離を置いて周辺からオルムの美しい曲線を眺めたり、実際にオルムに上って周囲の景観を展望する楽しさは、単純な貨幣価値に換算することなどできはしない。それぞれに位置と姿を異にする済州のオルムは、それ自体が審美的対象であり、自然のままでの最高の展望台であり、野生の花の自然のままの展示場である。

オルムは今では、済州人にとって、心身を鍛錬し健康を保持する修練の場であり、親睦を深めるための社交の場になっている。今後は観光客にも「 虛心 」と「自省」の空間として重宝されるだろう。しかし、最近になって、オルムを訪れる人が増えることでオルムの野生の花々が荒らされ、オルムが毀損されるような傾向も現れている。したがって、将来にわたって多様な体験の持続可能な空間として利用するためには、オルムの保全対策を講じる必要がある。

オルムは以上のように、生態体験、歴史体験、文化体験、審美体験、慰楽体験などの場所として最適である。しかし、オルムを多様な体験の場所として提供すると同時に、経済的な価値も創出しなくてはならない。オルムにふさわしい経済的価値とは、手に取ってそれとわかるような貨幣的な価値を越えて、環境、生態的価値、歴史、文化的価値、審美、慰楽的価値などが加わってこそ、真価を発揮するだろう。

 

尹龍澤(ユン・ヨンテク)

済州大学哲學科 敎授。耽羅文化硏究所 所長。済州道 西帰浦市 江汀で生まれ育った。東国大学にて哲学博士学位取得。済州島の文化・環境・平和運動に参加する傍ら、関連文章の執筆に勤しんでいる。代表的な著書として『済州島の新舊間 風俗硏究』がある

     関連記事
· 済州の生命の森、「コッチャワル」· 済州人の父母の山、漢拏山
· 済州島の処女地、溶岩洞窟· 生命体の子宮であり腎臟でもある済州の湿地
ⓒ 済州ウィークリー(http://www.jejujapan.com) 記事の無断転載を禁止します | 版.聲明  
Most Popular
Photo
「在日済州人、彼らのお蔭で今日の済州があるんですよ」
兪弘濬『済州文化の深淵を込めました』
〖WCC〗世界の環境リーダー、人類に問いかけたメッセージは?
〖WCCあれこれ〗済州の生命(いのち)の森、「コッチャワル」
[청소년보호정책]
Mail to editor@jejujapan.com   Tel. +82-64-724-7776   Fax.+82-64-724-7796   청소년보호정책 : 고은영
登録番号 : Jeju Da 01093   登録時間 : 2008年 11月20日   発行人 : 宋姃姬
Copyright © 2009 jejujapan.com 掲載の記事・写真・図表など無断転載を禁止します。すべての内容は韓国の著作権法により保護されています。