文化コラム
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▲ 済州の喪輿の蛇 撮影:金唯正 |
蛇のことを済州語で「ぺヨム」と言うが、昔の済州ではその蛇こそは女性たちが家内で祀る重要な神であった。その信仰の形態にも二種類あり、豊作の神、すなわち富の神である七星信仰と、村の本郷堂神としての蛇信仰である。
七星信仰は中国の江南から伝わった蛇信仰であり、「内七星」と「外七星」に分かれる。そうした蛇信仰が済州島全島の随所に分布しているのを見ると、過去に穀物が希少だった済州の厳しい経済的状態を反映していることが分かる。蛇が穀物を盗み食いするるネズミを捕えて食べるので、穀物を保護してくれるという観念が、富の神という民間信仰に発展したわけである。蛇が豊作神になりえたのは、一時に数個の卵を産むという多産のせいである。蛇を七星と呼ぶのは、寿命を管掌する空の北斗 七星の神聖性を借りて、蛇を神話化したに違いない。
内七星は「アンハルマン(内女神)」「コパンハルマン(庫房女神)」とも呼び、庫房すなわち穀物倉庫を一杯に満たし、三度の食事の心配を免れさせてくれる神である。内七星は庫房の甕の中に蛇を象徴する徴表がある箱を入れたり、庫房の入口の壁に棚を造り、その箱を載せて祀ったりする。内七星の箱の中に糸巻と玉の首飾り、五穀を包んだ韓紙の束も入れる。
神房(巫俗の祭者、本土の巫堂にあたる済州語)は内七星に祈る際には、夏や秋の収穫が豊作で、甕の中に穀物を一杯にしてくださいとお願いする。さらに内七星に、蛇が姿を現さないようにと祈りもするのだが、それは雉狩、鷹狩、ネズミ狩などで歩き回っている時に、蛇が軒や石垣など家の敷地内をうろつきまわって人を驚かしたりすることがないように願うのである。済州の女性たちは家の祭祀があるたびに、庫房のチャロンチャク(竹を編んで四角形に造った籠、済州語)に供物を入れて内七星をもてなす。
外七星は「後ろハルマン」、「七星藁ニオ」とも呼ぶのだが、家の裏の静かな一角にあるミカンや柿の木の下に座定し、豊作と子孫繁栄、寿命を管掌する。外七星の形態は、石を積んでからチガヤを編んだ房をかぶせた小さな藁二オの形をしている。その房の中には豊作を祈る韓紙で美しく包んだ五穀、長寿を祈る糸巻、神体を象徴する色布(ムルセク)が入っている。この外七星には内七星と同じく、家の祭祀があるたびに供物をささげる。
神房は外七星に対して、家が富むようにと祈る。東側と西側からやってくる疫運と南の国からやってくる悪い病気をせき止め、子孫が財産を増やすことができるようにと祈るのである。七星を祀る家では、その家の女性が毎年、春秋に簡単な祭祀を執り行う。
済州市に住む梁さんのお婆さんの場合、今でも外七星を祀り、七星祭を執り行っているが、彼女の実家の母は6月、11月と2回祭祀を行っていたのに、自分は1回だけにしていると言う。彼女は霜月の最初の丑の日に祭祀を行った後に、藁を新しいものに取り換える。最近は時代が変わったせいで藁やチガヤを入手するのが難しくなったので、外七星をセメントブロックで作って祀っているとも言う。済州の蛇信仰は女性によって祀られてきたので、女性と関係が深い豊作、子孫繁栄、寿命の象徴性を帯びており、済州島の全域にわたって信仰されている。
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