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虚(ホン)墓(ミョ)
2012.05.18 (今) 金大安 contributor@jejujapan.com

「四・三巡礼」に参加して『虚墓』を知りました。屍身が捜せぬため、せめてもと遺品を埋葬した墓です。

   
 ▲ 東広村の「虚墓」の碑石     写真提供:済州4・3研究所

金ギュジュン詩人は虚墓の声を聴きました。

「私は虚(うつろ)だ。風吹き抜ける空洞だ。銃弾ぶちこまれ 魚についばまれて 虚。 もう返してください 私の四肢を 臓腑を。そして 開いたままの 私の眼を閉じてください」

東広(トングアン)村の片隅に佇む虚墓のとある碑石には、「李成宝は四・三事件時、西帰浦正房瀑布で悲痛にも死去なされたが、屍身確認できぬまま墓所を設定するゆえ子孫らは至誠をもって墓を守り、永世不忘なされかし」と刻まれています。

正房瀑布は観光名所です。二三㍍の岸壁から水が直接海面に流れ落ちる国内唯一の滝です。その岸壁から突き落とされた屍身は海に流され、捜せるわけもありません。この滝から西北二五㌔ほど山側に入った中山間地域に東広村がありました。それは元来、五つの集落で構成された村でしたが、四・三事件時の「焦土化作戦」のせいで四集落が「失われた村」と化しました。被害は村の建物、財産ばかりか、人命にも及び、百四四名が虐殺されたのです。そして、哀れにも屍身を捜すことあたわぬ人々の霊魂が虚墓に封墳されることになったのです。

四・三事件の狂風の中で壊滅した済州の伝統的共同体、その復元の努力までも、資本の横暴という高い壁に阻まれることが多いのですが、 それに挫けることなく、私の友人たちは「ノリ牌漢拏山」という広大(クヮンデ)(民俗劇の役者)組織を立ち上げ、共同体復元の夢を追っております。

昨年十二月十八日、五集落中の唯一復元された東広村で、『虚墓』が公演されました。フィナーレでは、凍える寒さの中で村人ら百人ほどが、広大らと熱い思いを共有し、乱舞しました。私もまたその輪の中に入れてもらいました。広大らは村の広場(マダン)に敷いたテント地を 舞台に見立て、 物語を展開します。

   
 ▲ 「ノリ牌漢拏山」の公演     撮影:金蒼生

序幕は三百年ほど前の封建朝鮮時代、官の収奪に耐えかねて故郷を棄てた人々が、 漢拏山の中山間に住み着き、火田を耕し、牛や馬を飼育して仲睦まじく暮らす様子が描かれます。 
 
第一場は、日本の植民地支配から解放された喜びの中で、山から大きな岩を運んで麦搗く石臼小屋を建て、そこで恋が育まれ、その二人の婚礼話に花を咲かせながら、麦搗きに精を出す村人達の姿が軽妙に描かれます。

第二場は、四・三事件のなかでも最大の犠牲者を生んだ「焦土化作戦」を描きます。山を拠点にするパルチザンを一掃するために、中山間の村人らに疎開令を下し夜間通行禁止を命じましたが、東広村の人々は疎開をためらったために大量虐殺されました。生火葬(生きたまま焼き殺すこと)という酷い仕打ちも描かれます。

第三場は、村人らの洞窟での避難生活、ここで件の新妻が男児を出産します。村人らはきっといつかは村に帰るのだとの想いを込めて東広と名付けます。洞窟が発覚してしまい、人々は雪降る漆黒の闇夜を標高千三百㌔のオルム(寄生火山)目指して二十㌔の逃避行に出ますが、その先々で追いつめられ、その場で殺されたり、正房瀑布や慕瑟浦や翰林に連行されて殺されました。

第四場は事態終結のあと、父母も祖父母も亡くした幼児東広の手を引いてわかめ売りに精出す、生き残った初老の女が、かつて逃避行を共にした若者に出会い、村を起こそうと提案します。女が「おら達はどこに住んでもかまやせんが、東広はあの村で育てんとなあ...」と。若者は、村の希望になれよと皆で育てた東広、親友の忘れ形見のその寝姿を見つめているうちに心が決まります。そして村に帰って家を建てようとしますが、すぐに崩れたり壊れたりしてしまいます。女が思案の末、「わかったぞな。順番を間違えたんじゃ。おら達は自分のことばかり考えとったんじゃ。おら達に帰る村が無くなったと同じように、亡くなった人らにも住む家が無かったのじゃ。おら達のことよりも、まず風の道、雲の道をさまよう哀れな霊魂をお慰めして、お墓を先に造らにゃならんのさ!」墓を建て、神房(シンバン)の巫術を借りて亡き人々の霊魂を彼岸に送ります。そしてようやく無事に家が建ち村が興され、村人総出で共同体復元を祝い、舞い踊ります。

この『虚墓』が大阪で披露されました。

「第二回 日韓演劇フェスティバル参加作品―劇団タルオルム、ノリペハルラサン(済州島)合同公演」が二月十日から十二日の三日間、五回にわたって公演されたのです。

在日三世らが大阪に立ち上げたハングルと日本語による演劇集団タルオルムは『チョゴリの地』を公演しました。豊臣軍に抗して散華した妓生・論介(ノンゲ)の熱い思いが、時を経、所を変えながらも、在日三・四世らが民族学校の制服・チョゴリを身につけ、胸張って生きる思いと繋がっているのだと。観客(五回で四百人ほど)たちには、両作品共、好評でした。

「見終わって時間が経つほどに、二つの作品が一つに繋がって記憶されていることに思い至りました。『韓流に熱を上げても隣の在日は見えない』という台詞は最近の韓流ブームに隠されてしまった現代史の、癒されぬまま放置された暗部をずばり言い当てていました」といった観客の感想がありました。『虚墓』については「感動したのは観客を舞台に引き入れること。そして惨たらしく殺された村人らが立ち上がり、生き残って村を興した人々と一緒に舞い踊り、歌い、願う場面に、魂が揺さぶられました」と。『二つの作品が一つに繋がって記憶され』たということに思いを巡らせてみました。韓流の流れに対抗するかのように嫌韓する人々、四・三事件の和解と相生、そして平和を誓う流れに逆行して新たな葛藤を持ち込む人々のあることを、『ひとつの記憶』として繋げたのだろうと推し量っております。

それにしても、凄惨極まりない物語の合間に、広大らがやりとりする艶話には、二度までも吹きだしてしまいました。心底、参りました。それこそが、彼ら「ノリ牌漢拏山」の真骨頂なのでしょう、笑わせ泣かせながら、共同体復元の大切さを、観客の胸に切々と訴えるのでした。

 

金大安
1942年、日本大阪に出生。父は 45年6月、光復2ヶ月前、大阪空襲で焼夷弾直撃によって即死。小中高大と日本学校に通う。教員、団体職員、古書店自営の後、僧職。(法名、大安。)昨十月、済州帰郷。

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登録番号 : Jeju Da 01093   登録時間 : 2008年 11月20日   発行人 : 宋姃姬
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