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「耽羅国立春クッノリ」から
セギョンノリと仮面戯
2012.02.06 (月) 古谷野洋子 contributor@jejujapan.com

ふたつの祝賀公演は、
若い女の妊娠・出産にまつわる物語であるが …
老妻は収穫の終わった冬を象徴し、
若い女と子供は新年の始まりである春を象徴している。

済州島の立春の祭

1月15日は日本では小正月といわれ、新しい年の安寧と豊穣を祈願する予祝の行事が行われる。韓国の村々でも旧暦1月12~15日頃には儒教式の酺祭や巫覡による新年のクッが行われ、1年間の共同体の安寧と豊穣を願う。旧暦1月12日から13日にかけて行われる「耽羅国立春クッノリ」は済州特別自治道済州市によって祝われる立春の行事である。その前夜祭では農楽隊の先導で木牛を引きながら市中を観徳亭まで行進する。そして翌日が本番の祝賀公演である。観徳亭で新年のクッと仮面戯が、隣接した済州牧官衙の庭でセギョンノリの公演が行われる。一時は廃れていたこの立春クッなのだが、1999年に復元され、それ以来毎年継続されている。ここでは、2011年に筆者が見る機会を得たセギョンノリと仮面戯を紹介したい。 

   
▲ (左から) 種を播く農夫と牛(仮面戯)、 セギョンノリの中の出産場面    撮影:古谷野曻

 セギョンノリ

今日は村祭だ。村人たちは4本の笹竹を運んで来て、広場の四隅に立てる。次いでは一本の長い竹竿を白布で引いてくる。人々は広場を駈け巡り、銅鑼を鳴らし、歌をうたいながら竹竿を広場の中央に立てる。竹竿は祭にやってくる神々の “よりしろ”である。竹竿が地面に立てられると、村人たちは手に手に笹竹を持って踊る。

そこへ若い女性が現れる(実際は男性が演じている)。女は具合が悪いようで、村人たちがシンバン(巫覡)を呼んで診てもらったところ、妊娠だと判明する。

ドラが叩かれ、女の回想シーンに転換する。顔を布で隠してやってくる女、嫁入りである。女の顔を覆う布をとり、服を脱がせようとする夫、どうも夫はあまり利口ではないようだ。姑は「カクシー、カクシー(嫁、嫁)」と怒鳴りながら次々と仕事を命じる。嫁は笊を持って仕事をしているが、途中で尿意を催し、おしっこをする。その時、突然、ひとりの男が現れ、後ろからのりかかって女を犯す。ここで女の回想シーンが終わって元の状況に戻る。

産気づいた女を見て、あわてて産婆を呼びに行く村人たち。介助する人々に囲まれて、2本の布を両手で引っ張りながらいきむ女。生まれてきたのは、なんと瓶である。しかも出生児であるその瓶には臍の緒までがついていて、実にリアルに感じられる。その子供は学問にはむかないが、粟作りの名人となる。

最後は、男女が仲良く畑仕事をするシーンである。そこに突然、歌い踊りながら竹を引いた人々がやってくる。仮面の者たちも現れ、音楽に合わせて踊りながら外の観徳亭の広場に向かう。観客もその後に続く。場面転換の技が絶妙である。の者たちも現れ、音楽に合わせて踊りながら外の観徳亭の広場に向かう。観客もその後に続く。場面転換の技が絶妙である。

 

仮面戯 

   
▲ 死んだ老妻か若い女と子供か、老人は選択を迫られる。(仮面戯)     撮影:古谷野曻

農夫が牛をつれて歌に合わせて登場する。農夫は牛で畑を起こし、畑に種を播く。

次に、仮面の女性6人が現れて踊る。一人の老ヤンバンがやってきて女たちに抱きついたりするが、女たちは相手にしない。老人は一人寂しく踊る。そこに若い女が笊を持って現れる。尿意を催し、おしっこをしようとすると、後にいたその老人に襲われ、妊娠する。臨月の近づいた若い女が産気づくと、通りあわせた老女(実は老人の妻)が介助する。生まれた子供の顔(実際は人形が仮面を被っている)はなんと老人そっくりである。

若い女の抱いている子供が自分の子供だと知った老人は嬉しそうに母子を抱き寄せる。それを見て怒った老女が、棒を手に夫である老人を追いかけるが、逃げられてしまい、若い女と老妻のいさかいとなる。そのうちに突然、老妻が転倒して頓死する。老人は老妻の死体の前で泣くが、若い女に子供を見せつけられる。老妻か若い女と子供か、選択を迫られた老人は、死んだ老妻と子供を何度も見比べる。そしてついには死んだ老妻を捨てて若い女を選んだ。老妻の亡骸を置き去りにして、若い女と子供を抱きかかえるようにして退場する老人。

次に、鳥が現れ、農夫の播いた種をついばむ。それを見た農夫は怒って棒で鳥を追いかけるが、逃げられてしまう。農夫は猟師に窮状を訴え、猟師が銃で鳥をしとめる。穀物は無事に収穫され、農夫たちが茣蓙の上で収穫後の作業に勤しんでいると、農楽隊が広場中央に現れ、輪になって行進しながら演奏する。仮面劇の出演者たちも一緒になって踊りだし、立春クッは終わる。

豊穣への願い

これらふたつの祝賀公演は、若い女の妊娠・出産にまつわる物語であるが、それと並行して、穀物を作る過程が描かれている。ここには、人間の繁殖と穀物の豊穣への願いとが重なりあって表れている。冬が終わって再び春が巡ってきた立春に際して、今年も豊穣がもたらされるようにとの願いを表現するのである。老妻は収穫の終わった冬を象徴し、若い女と子供は新年の始まりである春を象徴している。現代人の感覚からすれば残酷な象徴化と感じられるが、それが人間観、自然観が相似形を成す昔の人々の世界観、そして生活感覚だったのだろう。
*セギョンノリの内容については玄容駿『済州島巫俗の研究』を参照した。

 

古谷野洋子
神奈川大学大学院日本常民文化研究所特別研究員。神奈川大学「済州島研究会」会員。沖縄の最南端八重山の民俗を研究しているが、済州島の民俗にも興味を持ち訪れる。
 

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