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豚肉の島
共同体性の典範たるトッチュリョムとモムクク
2012.01.10 (火) 朱剛玄 contributor@jejujapan.com

     済州島再発見   

 
   
   ▲ (左) 驚くべき環境リサイクリング、済州トットンシ (右) 豚の内臓と血で作るスンデ   撮影 : 朱剛玄

豚を屠る祭

馬や牛よりも済州人にとって最も重要な家畜はトセギ(豚を意味する済州語)である。大小の宴会で豚肉が欠けているなんてことは考えられもしない。黒豚が有名な済州だけに、豚肉料理が発達してきた。動物に関する人間の信念と象徴体系が最もよく現れる局面は、やはり信仰ではなかろうか。済州の儒教儀礼である酺祭(ポジェ)では豚一頭を選んで捧げる。済州の神堂の種類の一つであるトンジ堂は豚を祀る。狩猟時代から猪がノロ鹿と共に、最も重要な狩猟の獲物だったからである。神話時代から豚を神に捧げ、その神が何故その豚肉を受け取るようになり、人々が何故その神に飲食物で祀るのかについては、容易には説明ができない。

舊左邑金寧里の本郷堂である「ケネキッ堂」のトッジェ(豚祭)は、豚を屠り、本郷堂神や豚肉を食べる神に捧げ、それを村人が分けあって食べる儀礼である。トッ(豚)という言葉とジェ(祭)という言葉が合わさってトッジェ(豚祭)となった。共同体的祭儀に豚肉が供えられ、共食と献食の意味網を強化させる。共同体的豚肉文化には、トッチュリョム(豚供出金制度)という長い伝統もある。1970年代前後までの済州の田舎では、村人が集まり一緒に豚を屠って食べた。豚を屠り、毛を抜いて焼いた後に、全体を14等分し、供出した金額にしたがって配分し、各人が家に持ち帰る。とは言っても、こうした制度は実は済州に特有の文化ではない。ミクロネシアのポンペイ島を調査した際に、彼らも済州のトッチュリョムと同じような制度を楽しんでいる現場に出くわした。「豚を屠る日」がまさに祭の日とされていた。 

 

共同体のモムクク 

   

▲ 済州モムクック   撮影 : 梁溶眞              

共同体性が強く現れる豚肉料理もある。モムククは公食そのものである。大きな行事で豚を屠り配分する際にみんなが一緒に食べる豚ホンダワラスープ、これはただのスープではなく、濃厚で、長時間煮込んだ具だくさんスープである。豚肉を茹でた汁に、生姜、ホンダワラを入れ、さらにそば粉を混ぜて、どろどろ状にする。婚家での家門婚礼の前日、葬家での祖奠の前日に、さまざまな人々が集まり、豚を屠り、その豚肉を茹でた釜で作る。ホンダワラは済州沿岸で春に採取して乾燥させておいて食用にする。豚ホンダワラスープは濃厚な味が醍醐味である。

 本土とは異なり、済州の日常の飲食には濃厚なスープ類やチゲ類がないので、大きな行事のある日には、これが必須である。それを食べる大きな行事に参加しなかったり、招待に応じないのは社会的関係の断絶を意味する。ホンダワラは粘質性繊維質をはじめとして各種の無機質と抗酸化物質が豊富である。沖縄では豚肉を海藻類と一緒に食べるおかげで長寿だと信じている。モムククと合わせて蕨を入れて煮た蕨スープ、或いはユッケジャンスープも記憶するに値する。済州が長寿の島であることを記憶していただきたいものである。

スンデ(腸詰)文化

豚文化はスンデも創造した。済州には直火を利用した焼き料理が少なく、焼くという方法を取らずに、たいていは煮る。宴会料理に欠かせないのがスンデ。スンデをトッスエ(トッ=テジスエ=スンデ)と呼ぶ。モンゴルの羊の内臓と血を利用した腸詰であるケデスは、羊の血にそば粉、青唐辛子、野生のニンニクと塩を混ぜて作り、済州のスンデと似ている。済州でも陸地の糯米とは異なり、そば粉を使用するという点で、モンゴルのそれと類似している。しかしながら、バリ島の高級そうな都市ウブトへ行けば、スンデ専門店がある。我が国のスンデとあまりにも似ている。豚という家畜自体が南方でこそ広がっていたのだから、スンデもまたやはり、もっぱらモンゴルの影響とするのは短見である。

環境リサイクリングの典範たるトットンシ(豚トイレ)

済州の豚文化の名品はなんといってもトットンシ(豚トイレ)である。トイレに麦わらを敷き豚が糞をするとその麦わらは腐って堆肥となり、それを火山灰が広がる麦畑に撒いた。人がものを食べ、その食べ物で生産された糞便を豚が食べ、肥料と化した麦わらは麦畑に撒き、再び人が麦を食べるといったように生態循環になっている。現代人は糞便を汚らしいものとばかり考える。現代人は清潔を何よりも尊ぶ資本主義的な道徳で武装して、水洗便器を武器と見なす一方で糞便を冒涜し、無視してきた。

済州の人々の糞便愛は格別なものである。糞便は農耕にとっての黄金に他ならなかった。人の糞便、牛の糞、豚の糞、鶏の糞などを選り好みすることなくそれぞれの用途に合わせて堆肥を作り、畑に撒いた。体から出てきた廃棄物を糞桶に入れて畑に運び、畑の収穫物を食べ、再び排泄物を自然に返すという誠に自然な循環、それが従来の方式だった。麦の種と豚の排泄物を混ぜたうえで畑に撒いて、種が散らばらないように工夫した。飼料問題の解決、処置に困る糞便の消去、さらには麦畑に撒かれた豚の糞が結合して、糞豚文化が自然に成立した。結局のところ、糞便処理、飼料調達、肥料供給といった一挙三得、一石三鳥の効果ということになる。

特に留意すべきは、糞豚と言っても糞だけ食べているのではなく、実際にはサツマイモの滓、麦、粟などの雑穀を洗った後の水、台所から出る汚水と穀物の皮を混ぜたものなどのすべてが豚の餌だった。人も食べるものがない境遇になれば、飲食物の滓の量も限界があった。そのため、各種の飲食物の滓を丹念に集める仕事は女性にとって重要な任務だった。エコフェミニストの立場から見ても、豚トイレと飲食物の滓、糞の関係は興味深いものではなかろうか。

今日、日ごとに生態環境問題に関する視点が更新されており、自然に目を振り返らせてくれるリサイクリングが俄かに注目を集めている。その意味でも、豚トイレはどうやら最も完璧なリサイクリングのようである。

口蹄疫の騒動で数知れない牛と豚が地中に生き埋めにされた。工場式の畜産が招きよせた文明史的敗北である。仏教の縁起論を思い浮かべて、生命の網に連携するインドラネットを想起すれば、私たちは私たち自身を地中に生き埋めにするという蛮行に狂奔しているということになる。豚トイレの生態環境における重要性を改めて考えないわけにはいくまい。

朱剛玄
慶熙大学にて文学博士(民俗学)学位取得、高麗大学にて文学博士(文化財学)修了。済州大学碩座敎授(韓国学)、海洋文化研究院長、2012麗水国際博覧会海洋水産諮問委員。イオド島研究会海洋アカデミー院長、季刊『海洋と文化」編集主幹など。著書としては『済州紀行』『韓国文化の謎』『赤道の沈黙』『觀海記』など多数。

 

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