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野糞を交えての奮闘! 正真正銘の済州島一周完走
風と友情の済州一周サイクリングの10年(2)
2011.12.09 (今) 玄善允 editor@jejujapan.com

   
▲ 撮影  :  安幸順

1回目は風が強い3月末でひどい目にあったから、2回目はその同じ年に最も風の少ないはずの秋を選び、リベンジを試みた。秋の微風は中年の私たちを鼓舞してくれるはずだった。それに医療班というわけで、医師である僕の弟も新たに加わって、都合4名、それに少しは平均年齢が若くなったことだし・・・

正午過ぎに済州空港に着くや否や、二泊三日の限られた時間内で何としても済州一周完走をと、昼食の時間も惜しんで自転車の組立を終えて、直ちに出発した。済州島の西端の漁港町に夕刻までには到着のはず。

海岸道路は自然の地形をそのまま活かした屈曲とアップダウンの繰り返し。上り坂は少々厄介ながらも、登りきると新しい眺望が開けるのを期待できるから、辛さもむしろ香辛料になる。次第に傾く太陽が海面に照り映える景色もまた変化に富む。しかも追い風である。最高時速48キロ、平均25キロで68キロをほぼ実働3時間足らずで、予定のモスルポに着いた。

物色のあげくに決めた安ホテルに荷物と自転車を置き、直ちに最寄りの銭湯で汗を流した。そして夕食前に軽く一杯というわけで、ホテル横のコンビニでビールを購入し、店の前に据えてある縁台に座して杯を傾けてから、味で有名と聞いていた波止場の入り口にある食堂へ。そこからは、落陽の全容が望めて、残照が眼にまぶしい。「ハンチ」の刺身とビールと焼酎、そして海鮮鍋を堪能し、すっかり漆黒の闇となった海岸を散歩するうちに地元の女高生と出会い、中年男らしく鼻の下を伸ばして一緒にカメラにおさまって上機嫌。快い眠りを貪った翌朝にもホテルの主人と記念写真におさまるという能天気な私達。その一方で、100キロ近くに及ぶその日の行程の不安もあったから朝食も摂らずに早々と出発。

朝の新鮮な空気がおいしい。好天気とまたしても追い風のおかげで、最初の難関である山房山の急斜面も難なく越えて、予想より遙かに早く巨大なホテルが林立する中文観光団地に颯爽と到着。この調子なら、宿泊予定の城山日出峰に夕刻までには充分に到着可能、あちらでまたしてものんびり銭湯を愉しもうなどと暢気なもの。

ところが楽観の後には苦労が待ちかまえている。朝食後、僕が海外に出ると必ずといっていいほど苦しめられる下痢が始まったのがその前兆だった、というのは後智恵にすぎない。急に、強い向かい風が襲い始めた。風が舞い、砂を交えた風が顔に痛い。ひたすら風との格闘が続く。

午前中で最もきつい坂を上りきると眼下に済州島第二の都市、西帰浦の市街地が広がる。その中心街のブティックには従兄が待ち受けていた。久方ぶりの再会を喜びながらも、先を急ぐために昼食の誘いを断り、コーヒーだけご馳走に預かって再出発。またしても風の抵抗をまともに受けて、国道の長いアップダウンをひたすら耐えることになる。小刻みにギアチェンジを繰り返して体力の消耗を防ごうとするが、ついついもっぱら最下位のギアに頼って堪え忍ぶ。左手に優しく神々しい姿を見せてくれる漢拏山の励ましも何の役にも立たない。体を前傾し、ひたすら漕ぐ。海岸道路に入ると、風は一層激しくなる。遥か遠くに見える日出峰の美しさが恨めしいほど。

風が一瞬の休息をすることもある。しかしその楽さをひとたび経験すると、そのあとに襲い掛かってくる風の重さがますます全身を圧倒する。

というわけで、海岸道路に入ってからのたかが35キロの行程の間に3回も休息を取ってやっとたどり着いた日出峰。夕暮れを背景にして厳粛な美しさを誇示してそびえ立つ峰を見ても、感動などという余裕はない。長時間の風との格闘で体の熱がすっかり奪われてしまっており、秋の夕暮れの風が肌に冷たく、体の奥から震えが襲ってくる。

苦しんだご褒美というわけで、その地域で最も高級そうな宿を張りこんだ。急いでシャワーを済ませて、日出峰脇の「陽の昇る食堂」に入った。窓から見える暗い海の浪は恐ろしい勢いで岸壁にぶつかっては弾け、その音が全身に響いてくるかのようだ。サザエの刺身と辛味鍋を肴に焼酎を飲んでも、いつもの元気が出てこない。日本酒の熱燗でもあれば、少しは元気も出そうなものをと思いながらも、韓国でそれを望むわけにはいかない。意気が上がらないままに、早々に宿へ引き上げた。

翌朝8時、海女食堂のおばさんたちは朝食の真っ最中。アワビの粥なら出せるというので、朝食はそれに決めた。やはりおいしいし、私は育ちのせいか、いくら満腹でもが食べ物を残すことができなくて、無理して平らげた。そして、その罰が当たる。いざ走り出すと一度は収まっていた下痢が再発しはじめた。食堂、民芸センター、給油所など都合5箇所でトイレを借りるばかりか、一度はこらえ切れずに、海辺に石を固めて作られた軍隊の監視所の脇で、なんと40年ぶりの野糞まで。同行者たちを大いに心配させた。

とはいうものの、この日は風が少しは収まったし、そのうえ、追い風ということもあるし、城山から旧座あたりの海岸道路はほとんどアップダウンのない平坦で美しい絶好のサイクリング道。その勢いで、途中からの自動車道も快適に走行し、無事に予定の65キロを完走し、空港に着いたのは予定よりはるかに早い12時30分。急いで自転車を梱包し、レストランで祝杯をあげた。さらには、折角の完走なのにその程度では物足りないと、大量のビールを仕入れて空港脇の芝生に持ち出し、芝生に寝転んで秋の澄み切った空を肴に饗宴を楽しんだ。夕刻になって、わざわざ西帰浦から駆けつけてくれた従兄の見送りを受けてようやく飛行機の人となったのだが、その機中でも、またしてもビールとウイスキーなのだから、医療班たる我が弟が本気で心配するのも無理はないか。この成功に味を占めて、また来年もなどと、僕らは意気軒昂。毎年の済州巡礼サイクリングを固く誓いあったのである。

 

玄善允 
1950年、済州島出身の在日朝鮮人を両親として大阪に生まれ、大阪大学及び大阪市立大学大学院にて仏語・仏文学を学び、日本の京阪神の諸大学にて仏語仏文学を講じる。フランス文学以外の著書・論文としては、在日論として『「在日」の言葉』その他があり、済州関連では「龍王宮再考―聖性を欠いた場における祈りと孤立した共同性」その他がある。済州大学校耽羅文化研究所特別研究員、大阪経済法科大学アジア研究所客員教授。

 

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登録番号 : Jeju Da 01093   登録時間 : 2008年 11月20日   発行人 : 宋姃姬
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